エンジニアの夜時間

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「歓喜の歌」のようにドラマチック。新世紀エヴァンゲリオンが与えてくれたカタルシス

2021年3月8日(月)に公開された「シン・エヴァンゲリヲン劇場版」が盛り上がっている。特定の層だけかもしれないが、熱狂と言えるぐらいの盛り上がりだ。もともと熱狂的なファンの多いエヴァンゲリオンだが、なんでこんなに興奮しているのか考えてみたところ、最後にドカンと幸福感が満ちるところが、ベートーベンの「歓喜の歌」を初めて聴いたときと、同じような感じだと気付いた。

ベートーベンの作曲した交響曲第9番「歓喜の歌」は、日本では年末になるとあちこちで演奏される。そのためクラシック音楽としては珍しく、「知ってる」「聞いたことがある」という人もたくさんいる。しかしその皆さんが「歓喜の歌」と認識している合唱部分が一時間を越える長い曲のごく一部であり、しかも登場するのは最後の最後である、ということを知っている人はあまりいない。

歓喜の歌」は4楽章構成をとる交響曲であり、演奏時間はおおよそ70分ある。その中で有名な合唱部分は第4楽章の後半、時間にして60分を越えてから登場する。「歓喜の歌」を初めて聴くときは合唱による『Freude!』が出てくることを期待しついるのだが、そこに至るまでの曲は苦しい運命に立ち向かうようで、生きる喜びに満ちるというより戦いを挑むような雰囲気を持つ。第4楽章の冒頭になると、ようやく合唱の主旋律が登場するが、音量は小さく一部の楽器でのみの演奏のため、もどかしく歓喜にはほど遠い。60分間、待って待って待ったあとに出てくる華々しい合唱により、聴衆だけでなく演奏者も喜びが爆発する。それがベートーベンの歓喜の歌という印象を私は持っている。

シン・エヴァンゲリヲン劇場版は「歓喜の歌」の合唱のようなカタルシスを古くからのエヴァファンに与えてくれたように思う。1995年に放送されたテレビシリーズは悩みと苦しみを視聴者に与え、答えを求め観たはずの1997年に公開された旧劇場版はより深い悩みに加え痛みを提示する結果となった。その後は漫画版や設定資料集、関連グッズや考察サイト、果ては同人誌まで巡るも答えは得られず、2007年に四部作である新劇場版がはじまった。結果的に振り替えってみれば、新劇場版は「歓喜の歌」の4楽章のような効果を古くからのエヴァファンへもたらしていたと思う。新劇場版についての感想はこちらのエントリーにまとめてある。
tetsuitafu.hatenablog.com


私も含め、テレビシリーズや旧劇場版からエヴァンゲリオンを追っているファンは、答えを求め何年も何年もさ迷っていたように思う。リアルタイムでテレビシリーズを見ていた場合、その期間は四半世紀を越えている。「シン・エヴァンゲリヲン劇場版」は25年待った答えを遂に得られた。今はまさにその喜びが爆発し大きな興奮の渦となっている。まさか製作スタッフも見ているファンもこんなに長い時間待たされるとは思っていなかったし、最初からこうなることを知っていたらエヴァンゲリオンを追うことは無かっただろう。選んで25年も待つなんてできないことであるから、偶然とはいえこの喜びの渦に加われたことは幸運だった。

Freude!

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80分ありますが、是非。